「スポーツシャック」の
ヘビトラデイパック
完成記念特集③
デザイナー・藤本孝夫の
こだわり解説編!
撮影・文/山下英介
ブランド休止後40年を経て、華麗なる復活を遂げた「スポーツシャック」。その皮切りにふさわしい本格プロダクトが、今回の『ヘビトラデイパック』である! しかし当時とはモノづくり環境が大きく変わった現代において、小林泰彦さんのこだわりを具現化するのは容易なことじゃない。そこで「ぼくのおじさん」は、その制作を手がけてくれた「ARTS&CRAFTS」の藤本孝夫さんにインタビュー。いっけん素朴な表情の中に詰め込まれた、飽くなきこだわりを探ってきた。
小林さんのイラストの
世界をいかに具現化するか?
●11月28日19時〜よりオンラインショップで販売開始!



『ヘビトラデイパック』、素晴らしい完成度に驚かされました! 最初に小林さんからデザイン画を見せられたとき、どんなことを思いましたか?
藤本 いちファンとして「わぁ〜直筆のイラストだ!」と感動しました(笑)。シンプルでありながら、線一本一本に小林さんらしい世界観が表現されていて、これを実際のバッグとして形にしていくのがとても楽しみだと思いましたね。
でも、実際につくるのは大変でしたか?
藤本 あのクラシックな形状を忠実に再現しながらも、小林さんがイメージされているサイジングや全体の雰囲気を再現することに苦心しましたね。特に縫製部分の厚みの処理や、革とキャンバスそれぞれの素材選びには細心の注意を払い、デザインの美しさと機能性のバランスをとるよう心がけました。






パラフィン加工を施した帆布とレザーの組み合わせが味わいたっぷり。「スポーツシャック」の織りネームが、そこに洒落っ気を添えている。伝統的なスタイルだから〝ありそう〟にも思えるけど、探すと全くないという絶妙なデザインだ!
最近こういうクラシックなデイパックってなかなか見かけませんが、やっぱりそれって、生産が難しいからですか?
藤本 現在のものづくり環境では、こうしたバッグを量産するのは容易ではありませんね。材料、特に革の下仕事など手間のかかる工程が多く、また職人の経験や感覚に依存する部分も大きいため、効率化や機械化が難しいんですよ。だからこそ、今回のプロジェクトでは、手作業による丁寧なものづくりを心掛けました。生産を依頼したのは、私と約40年の付き合いがある、東京・浅草の熟練職人がいる工房です。この工房は創業からおよそ80年の歴史を持ち、代々受け継がれてきた確かな技術と誇りを今も大切にしています。
シンプルなプロダクトではありますが、縫製がとっても美しいですよね。
藤本 このバッグは厚手のキャンバスとレザーを組み合わせているので、ミシンの調整や縫い目の美しさを保つのが難しいんです。特にカーブ部分や肩のベルト付近は、熟練の職人が丁寧にミシン掛けしています。




「アーツ&クラフツ」や「スタンダードサプライ」などで知られるバッグデザインの巨匠、藤本さんが手がけているだけあって、そのクオリティの高さは一目瞭然。ストラップの裏に仕込んだフェルトの厚みは小林さんもこだわったポイント。多少重たい荷物を入れても、さほど重さは感じない。
どんな素材を使っているんですか?
藤本 キャンバスには滋賀県の「高島帆布」を使っています。高密度に織り上げたコットンにパラフィン加工を施すことで撥水性やハリコシが備わっているんですが、これが使い込むほどに柔らかくなじんで、表情が変わっていくんですよ。経年変化を楽しみながら、長く付き合っていける素材ですよ。


もちろん最新の機能素材には敵わないけど、パラフィン加工を施したコットンだから、多少の雨なら楽にしのげる。その風合いは抜群で、最初はちょっとゴワっとした質感だけど、使うほどに柔らかくなじむだろう。これは未来のヴィンテージだ!



小林さんが言うところの「ズック」ですが(笑)、やっぱりこだわりの素材を使っているんですね。それではレザーは?
藤本 2種類使っているんですよ。ベルトやストラップには「栃木レザー」がなめしたタンニンなめしの牛革、ボトムの部分には柔軟性と耐久性を兼ね備えた国産のグローブレザーを使っています。どちらもバッグのクラシックなデザインと相性抜群ですし、経年変化による色艶の深まりも楽しめると思います。
まさかふたつの革を使い分けているとは思いませんでした。しかも世界中の革好きから注目されている「栃木レザー」を使っているとは。これはガンガン使って味を出したいなあ。つまり結果的に素材から縫製まですべてが日本製。本当に素敵なプロダクトが完成しましたね!
藤本 私自身も、このバッグの完成度には非常に満足しています。クラシックでありながら日常にも自然に溶け込むデザインですから、街中でもアウトドアでも、気軽に使ってもらいたいですね!
●11月28日19時〜よりオンラインショップで販売開始!





- 「STANDARD SUPPLY 二子玉川」で先行販売中!
『ヘビトラデイパック』は、現在「STANDARD SUPPLY 二子玉川」で開催中のイベント「meet “HEAVY DUTY CLASSICS” ~ヘビトラを楽しむ~」で先行販売中! こちらのバッグとキー&コインパース以外にも、様々な小林泰彦さんプロダクツを購入できます。会期は25日(火曜日)まで。急げ!
●会期:2025年11月13日(木)~11月25日(火) ※水曜定休
●会場:「STANDARD SUPPLY 二子玉川」
●営業時間:平日12:00~19:00/土日祝11:00~19:00
●STANDARD SUPPLY 二子玉川
〒158-0094 東京都世田谷区玉川3-9-8 和田ビル1F
●Tel:03-5797-9311
●アクセス:東急大井町線・田園都市線「二子玉川」駅 徒歩4分
1965年長崎県佐世保生まれ。桑沢デザイン研究所を経て、大手バッグメーカーでデザイナーとして活躍した後、2004年に独立。フリーランスとして国内外のバッグブランドを手掛ける。2006年には自身の会社を設立し〝用の美〟をテーマにしたブランドARTS&CRAFTS(アーツアンドクラフツ)を展開する。2014年からは、異なるテイストのブランドSTANDARD SUPPLY(スタンダードサプライ)もスタート。日本を代表するバッグデザイナーとして知られている