オーダー会開催!
仕立て屋水谷ひろきは
もっと気軽に
コットンスーツを
着てほしい!
撮影・文/山下英介
きたる3月7〜8日、「ぼくのおじさん」のアトリエでは、知る人ぞ知る腕利きの仕立て屋「Sartoria G.Rochi(サルトリア・ジ・ロキ)」こと水谷裕紀(みずたにひろき)さんを招いてスーツのオーダー会を開催します! といっても普通のオーダー会とはひと味違う。今回つくれるのはなんとメイド・トゥ・メジャー(MTM)のコットンスーツ一択! ウールのスーツはつくれません。いったいどうしてこんなオーダー会を開催するのか? 水谷さんにその真意を伺うとともに、彼の仕立てに賭ける熱い思いを取材してきました。
きちんと仕事をすれば
生地は応えてくれる

今回は驚きましたよ! まさかコットンスーツ一択のオーダー会なんて聞いたことありませんから(笑)。
水谷 ぼくはいわゆる総手縫いの仕立て屋で、ふだんはこの工房でビスポークスーツをつくっているわけですが、コットンスーツに関してはメイド・トゥ・メジャー(既存の型紙をベースに調整するオーダースタイル)で、縫製も外注するスタイルのほうがいいのかなって思うんです。
というと?
水谷 コットンスーツって普段着というかカジュアルウエアだと思うんです。一生ものとか堅苦しく考えずに、気軽に楽しんでもらいたい。だとしたら仮縫いも省いて外部のファクトリーで縫製すれば、もっといろんな人が楽しめるじゃないですか。


なるほど、その考えはよくわかります!
水谷 実はもともとぼくもファッションの入り口がヒップホップだったので(笑)、なんならそういう方にも着てもらいたいな、なんて。
その姿は全く想像もつきませんね(笑)。
水谷 高校生の頃はプリントTシャツとかつくってました(笑)。それがきっかけでファッション系の専門学校に入ったわけですが、デザイナーは自分には無理だなと思って、食うためにスーツの工場に就職したんですよ。
北九州市の名門「イシダソーイング」さんですよね?
水谷 そうですね。現在は神戸の「石田洋服店」のファクトリー部門を担っていますが、ぼくが就職した頃は独立した縫製工場でした。その頃は英国とかイタリアとか、仕立ての流儀なんて全然知らなかったのですが、ここはただの〝工場〟じゃなくて、まさしく手仕事を中心とした〝工房〟だなって。最初は手に職をつけたら東京でハイブランドにでも就職できたらいいなと思っていたんですが、ここでの仕事が面白すぎて、いまだに続けていられるという。
この仕事の面白さってなんですか?
水谷 ちゃんと仕事をしたら生地がそれに応えてくれるということですかね。職人さんも頑固で偏屈な人ばかりで、やってて楽しかったなあ。ただぼくとしては、〝だからこそ〟もっと上手くなってひとりでスーツをつくりたいという思いで、2年半ほどで辞めてしまうのですが。

その後はどうされたんですか?
水谷 上京してパンツ職人の尾作隼人さんに雇ってもらえました。でもぼくがあまりに覚えが悪いものですぐクビになりまして(苦笑)、それから紆余曲折あって、2010年から当時「タイ・ユア・タイ」内に工房を構えていた「サルトリアチッチオ」の上木規至さんのもとで働かせてもらえたんです。それまでにはたくさんの方に助けてもらえたので、本当に感謝しています。
ふたりとも今や日本を代表する巨匠というか大物職人じゃないですか!
水谷 尾作さんの手のきれいさや緻密さ、上木さんの柔らかな針の使い方・・・どちらもぼくにとっては驚きの技術でした。もう本当に日本のトップですね。それに対してぼくはもともとめっちゃ不器用なタイプなんですが(笑)、上木さんの隣で7年間働けたので、そのニュアンスや柔らかい仕事はかなり学べたと思います。本当にちょっとずつ、ちょっとずつなんですが。



人気テーラーのもとで働けば、自然と手数が増やせるというか、仕事もたくさんできますよね。
水谷 もう忙しい日しかなかったのですが、ずっと縫っていられたので(笑)、針を使うのはうまくなったと思います。
水谷さんの仕立ての技術は上木さんのもとで確立されたわけですね。でも、その後水谷さんが師事されたのは、ナポリじゃなくてミラノのテーラーさんなんですよね? それはどうして?
水谷 学生ビザだったので、イタリアで修行したのは1年弱なんですけどね。独立するにあたって、技術に関しては上木さんから教えていただけたやり方で完結させるつもりでした。なのでぼくがイタリアで学びたかったのは、技術というよりイタリアならではの感性だったんです。
日本で学んだ技術の、感覚的な裏付けを学びにいったというわけですね。
水谷 そうですね。結局受け入れてもらったのは、ミラノの『サルトリア グリィエルモ ロフェナ』という小さな工房でした。スタイル自体は構築的なミラノスタイルの典型でぼくが目指すところではなかったのですが、その技術と情緒的な感性はすごく勉強になったし、今のスタイルにも生かされています。親方であるグリィエルモさん自身の人間性も素晴らしかったですしね。それで独立する際の屋号はグリィエルモさん(Guglielmo)の頭文字のGと、ぼくのイタリアでのあだ名「Rochi」を合わせて「Sartoria G.Rochi(ジ.ロキ)」と名付けたんです。


そうか、イタリア人は「は行」が発音できないから「ヒロキ」じゃなくて「ロキ」になるんだ(笑)。
水谷 帰国してからは地元である三重県四日市市のショップ「Brezza」さんの中に工房を開設させてもらいましたが、去年勝負をかけて(笑)、東京にアトリエを移転させたというわけです。

手縫いの温もりが
詰まったスーツを
ひとりでも多くの人に
激動の職人人生ですね(笑)。今や東京は世界的にみても腕利きの仕立て屋が集まっている激戦区だと思いますが、そんななかで水谷さんの強みってなんですか?
水谷 ぼくの技術は上木さんのもとで学んだ柔らかなナポリスタイルの縫製がベースなのですが、そこにミラノで学んだ芯地使いをかけあわせて、胸まわりには男性的なボリューム感をプラスしています。肩線のなだらかな落ち方や、襟から流れる生地の美しさ、全体の〝丸さ〟はお客様に喜んでいただけるポイントですね。脇の抜けもきれいなので、小柄な人は大きく見せられ、大柄な人は細く見せられるスーツであるとも思います。


それはぼくにとっては嬉しいポイントかも(笑)。ちなみによく〝柔らかく縫う〟と言いますが、それって具体的にはどういうことなんですか?
水谷 ミシンのように縫うときの〝引き〟が強いと、自然と生地もしっかり固まって服自体も硬くなっちゃうんですよね。それに対して手縫いはゆっくり縫えるので生地を固めない。それでいて縫い目をキュッと締めることもできるので、柔らかくて立体感のあるスーツがつくれるんです。個人的にいうと、生地が縫われていることに気づかない、みたいな状況が理想ですね。

魚が板前に捌かれているのに気付かずにピチピチしてるみたいな(笑)。ということは、手縫いだったとしても忙しいときはピッチが早くなって妙に固い服になっちゃう、みたいな事態も起こりうると。
水谷 ・・・ぼくは気を付けていますが、仕立て屋も人間なのであり得ますね(笑)。特に年末は。
ちなみに今回のファクトリー生産のMTM(メイド・トゥ・メジャー)スーツは、水谷さんの理想とする柔らかさはちゃんと表現できるんですか?
水谷 ええとですね、実はぼくが工業製品のつくり方を理解していないので(笑)、縫製に関してはほぼハンドメイドなんですよ。お願いしている工房のビスポークラインを使って、地縫い以外はほとんど手で縫っていますし、上襟はファクトリーじゃなくてぼく自身がアトリエで縫って仕上げています。だいぶ手がかかっていると思いますよ。







ホントだ! 手縫いの味があるし、触った感じもパターンオーダースーツ特有の工業製品っぽさがまったくない!
水谷 ほかのテーラーさんのことはよく知りませんが、仮縫いがないというだけで、たぶんビスポークとほぼ変わらないと思うんですよね。そこはかつての「タイ・ユア・タイ」でキートンやアットリーニの服をたくさん見てこれた成果なのかなって。
これはめちゃくちゃお買い得だなあ・・・。コットンスーツ一択なんてもったいなくないですか(笑)? せっかくだからウールもOKにしません?
水谷 いや、型紙もコットンスーツ用につくっていますから、これでいいんです!
そこは頑固なんですね(笑)。ではぼくも先陣きって一着注文させてもらいます! 皆さんもぼくと一緒に、ぜひ。

「ぼくのおじさん」編集人は
こんなスーツをつくりたい!
というわけでめでたく開催が決定した、前代未聞のコットンスーツオーダー会。〝ビスポーク〟と〝メイド・トゥ・メジャー〟の指し示すところはテーラーによって様々だけど、編集人が見たところ、こちらの縫製工程はかなりビスポークに近く、一般的にいわれている〝パターンオーダー〟とは、見た目も着心地も別物だ。型紙はコットンスーツ用にアレンジされており、ブルゾンから着想を得たややスポーティな仕様なのだとか。ちなみに現在のオーダー価格は¥205,000+税。もちろん安いものではないけれど、これほどの手のかかり方を考えれば、かなりリーズナブルだと思う。
こちらのコットンスーツにおけるハウススタイルは、広めのラペル幅を特徴とした3つボタン段返りのシングルブレストで、ポケットはフラップなし、袖口のボタンはひとつ、ノーベントというデザイン。2アウトプリーツのパンツはベルトレスで、サイドアジャスタ仕様。肩幅はやや広めで、自然な落ち感が美しい。男っぽいけれど誇張しすぎずほどよく力の抜けた、極めてベーシックなスタイルといえるだろう。そしてなにより、いい表情なんだこれが!
これらのデザインは基本的に変更できないが、ラペル幅やパンツのシルエットなど、型紙調整で対応できる範囲ではある程度アレンジ可能だ。
特別な凝ったデザインを求めている方には向かないけれど、定番好きでオーダースーツの本質をご存知の方なら、その価値をきっとわかってもらえるのでは?
ぼくははっきり言って、かなりすごいと思う!






さて、編集人にとっては久しぶりの注文となるコットンスーツ。「もっと気軽に楽しんでもらいたい」という水谷さんの気持ちに応え、いつか見たミラノのおじさんのように、惜しみなく着られて、着るほどにいい味の出る一着をつくろうと思っている。
多少ゆとりのある52サイズのゲージをベースにしつつ、パンツはちょっと太めにして、格好つけずに着られるスーツを狙ってみた。
生地に関してはイタリア製の軽めのコットンツイルを選んだけど、もっと軽くて伸びるストレッチ生地でつくったっていいと思う。ある意味こだわりすぎないのが、コットンスーツの魅力なのだから。もちろん高価なビスポークではそんな勇気が出ないけど、「Sartoria G.Rochi」のメイド・トゥ・メジャーなら、こんなスーツにもトライできるってわけ。
ネクタイなんて締めないで、膝が抜けても気にせずに、クッタクタになるまで着てやるぞ!







軽快なコットンツイルをはじめ、モールスキンやコーデュロイなど、秋冬の生地もご用意。イタリアや英国の有名どころに加えて、一部デッドストックものもある。肩肘はらずカジュアルに着られるものを選んでほしい。編集人はイタリアの名門ラルスミアーニをチョイスした。
Sartoria G.Rochi
コットンスーツ
オーダー会
【場所】
Atelier Mon Oncle
住所/東京都新宿区水道町1-9 しのぶ荘(地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩4分、地下鉄有楽町線江戸川橋駅から徒歩6分程度)
【開催日時】
3月7日(土曜)12:00~19:00
3月8日(日曜)12:00~19:00
【展開商品】
●スーツ¥205,000+税●ジャケット¥151,000+税
●トラウザース¥54,000+税※選ぶ生地次第でアップチャージあり(スーツで¥50,000以内)
【納期】
⚫︎約2ヶ月。仮縫いはなく、ご自宅まで配送させていただきます。
【入場】
予約優先※所要時間60〜90分
※フリーのお客様も大歓迎いたします。
【決済方法】
クレジットカード・現金
【ご予約・イベントのお問い合わせ】
info@mononcle.jp
もしくはDMにてお願いいたします。