2022.10.4.Tue
今日のおじさん語録
「役者というのは、行をする者、自分というものをよく考え、見極める者のことやと思う。(藤山寛美)」
お洒落考現学
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連載/お洒落考現学

光石研と新谷学の
アメトラ三番勝負
in文藝春秋!

写真/古江優生
スタイリスト/土屋大樹
ヘアメイク(光石さん)/廣瀬瑠美
文/山下英介

かたや最も若者から愛されている〝シティおじさん〟光石研。かたや最も権力者から恐れられている〝文春砲おじさん〟新谷学。活躍するフィールドは異なれど、今一番目が離せないふたりのおじさんには、ひとつの共通点があった。それは年季の入りまくった服好き、さらに言うとアメトラ好きってこと! さてはこのふたり、ものすごく趣味が合うのでは? というぼくたちの素朴な疑問から生まれた、奇跡の私服セッションをお楽しみあれ。ちなみに撮影が行われたのは、なんと新谷さんが働く文藝春秋社。なんて太っ腹な会社なんだ!

 月刊『文藝春秋』の編集部で行われた最初のセッションは、ジャケットスタイル対決。お堅い雑誌のイメージとは裏腹の、こなれまくった新谷さんのスタイルにみんな驚くはず! 実は新谷さんは、業界では知る人ぞ知るお洒落編集者。学生時代は『ポパイ』や『メンズクラブ』を愛読し、ブルックス ブラザーズでアルバイトをしていたという、筋金入りのシティボーイなのである! 
 アメトラ派の必携アイテムともいえるラルフ ローレンのエルボーパッチ付きツイードジャケットにバーバリアンのラガーシャツ、さらにそのインナーにブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツとネクタイ、RRLのベルトにジーンズ、ブルックス製オールデンのローファー・・・というプロ級のスタイルも、そう聞けば納得!? 

キャップの被り方ひとつとっても年季が窺える、新谷さんのスタイル。ちなみにアンティーク風に見えるレクタンギュラー型の時計は、かつてバッグで有名だったN.Y.のブランド、グルカのもの。決して高価なものではないが、新谷さんにとってはかけがえのないリアルヴィンテージだ。

 でもさらにすごいのは、この最高にいい味の出たジーンズが、ユーズド加工ではなくリジッドから10年近くかけて育てた〝自前ヴィンテージ〟ってこと。なんと新谷さんが着こなすワードローブは、そのほとんどが10年モノで、30年選手も珍しくないのだという。おそらく彼はこのヘリンボーンツイードジャケットを、死ぬまで着続けることだろう。キミたちはそこまでひとつのアイテムを愛し抜く自信はあるか? 筆者はない!

 さて、新谷さんの濃厚なツイードスタイルに対する光石さんの着こなしは、なんとシアサッカージャケット! ちょうど端境期ゆえ季節こそ食い違ってしまったが(申し訳ありませんby編集人)、どちらもパッチ&フラップポケットというあたりがさすが。ふたり並んだ姿は、まるでラルフローレンのルックブック! かつて光石さんはTVドラマ『渋井直人の休日』で、グラフィックデザイナー役を演じたが、今日の出立ちは敏腕ファッションエディターか大手セレクトショップの重鎮バイヤーを彷彿させる。つまり完全に玄人級ってこと!

今や人気が過熱しているロレックスのエクスプローラー1も、光石さんがしているとまったく嫌味を感じない。細身&くるぶし丈のパンツと、ぽってりしたフォルムが特徴の現行版ウォークオーバーとのバランスも、プロ級のバランスだ。

 ジャケットとネクタイは大好きなブランドだというエンジニアド ガーメンツ、くるぶし丈に設定したウールサージのグレートラウザースはビームス プラスと、新しいアイテムを柔軟に取り入れている光石さんだが、やっぱりボタンダウンシャツはブルックス ブラザーズだし、ホワイトバックスはウォークオーバーだったりして、ホッとする。温故知新を地で行くこの絶妙なアップデート加減は、どこか光石さんの俳優としてのスタンスにも共通するところかもしれない。

ブルックスVSガーメンツ
同じスーツでもここまで違う!

 さて、続いてはスーツ対決。光石さんは先ほどに続いてエンジニアド ガーメンツのネイビージャケット&パンツに、ブルックス ブラザーズのキャンディストライプ柄のボタンダウンシャツとニットタイという、還暦超えとは思えないスタイリッシュな装いを披露! 全身をブルー系で統一しているのが、若々しい雰囲気の秘訣。きっちりして見えるのに決して堅苦しくないこのコーディネート、ぜひ真似してみたい。スーツの足元にウイングチップを合わせるのはアメトラのお約束だけれど、あえてオールデンではなく、フランス製のパラブーツを選んじゃう軽やかさも光石さんらしい。実はこの靴、けっこうレアものです。

エンジニアドガーメンツのジャケットは、おそらく先の対決で着ていたものと同モデル。アメトラの定番である3パッチ&フラップポケットというデザインに加え、芯地や肩パッドを省いた軽やかな仕立てによって、どこかカジュアルな印象だ。ちなみにパンツのクリースもなし。これならオンオフ問わず着られそうだね。

 ちょっとカジュアルな光石さんのスーツスタイルに対して、文藝春秋という歴史ある会社で執行役員も務める新谷学さんのスーツは、完全なるビジネス仕様。15年ほど前に一時期だけ生産され、ブルックスファンの間では〝幻〟と謳われるオールハンドメイドスーツである! 超高級生地に2プリーツのパンツを合わせたこちらは、いわゆる1型とは違う、ちょっと重厚な一着。こちらにボタンダウンシャツやレジメンタルタイを合わせたスタイルは、新谷さん曰く〝昭和の重役スタイル(笑)〟。いたってクラシックに見えるけれど、実はシャツはかつてトム・ブラウンが手がけたブラックフリースという、絶対誰にも気付かれないであろうハズしも効かせている。こんなスタイルで政財界の大物と渡り合っているかと思うと、ちょっと痛快じゃないか?

足元はもちろんブルックス ブラザーズ製オールデン。時計はハミルトンあたりかな?と思いきや、実はアイビー第一世代の超大物、くろすとしゆきさんのオリジナル。えっ、くろすさんって誰って? お父さんに聞いてみよう! 

クリーンにまとめるか、
濃厚に攻めるか?
カジュアルも蘊蓄爆発!

 最後の対決はカジュアルスタイル。光石さんはこちらでもナナミカのパーカからキャンディストライプのシャツ、ニット、ジーンズ、そして靴下に至るまで、ブルー系で統一した着こなしで臨んでくれた。これはもう、筋金入りのネイビー好きだ! しかも光石さんは謙遜するだろうけど、素材感のコントラストとか、裾の出し加減とか、ロールアップ加減とか、どこをとってもプロのバランスで、本職も唸らせるレベル。とてもきれいに色落ちしたジーンズは、一見ヴィテージかな?と思わされるけれど、実はヴィンテージレプリカで有名なウエアハウス社製で、精巧なユーズド加工が施されたモノだという。新谷さんとの〝モノ選び観〟の違いについては、あとでじっくり伺ってみよう!

よーく見るとものすごく凝っているのが光石さんのスタイル。ボタンフロントの丸首ベストやジーンズの色味とマッチさせたソックスの風合いを見れば、その実力のほどは一目瞭然だ! ここにあえてネイビーではなく、クラークスのスエードを合わせているのも、ちょっとシャイな光石さんならではのセンス。ちなみにこちらはゴアテックスをあしらった、ビームスとのコラボレートもの。

 最後を締めくくる新谷さんのカジュアルは、今ぼくたちがものすごく気になっている80’sアメカジの代表作、ウィリス&ガイガーの『G-8』が主役! あまりに凝りまくったデザインで、現代では再現不可能と言われる名作だ。こちらにオーチバルのバスクシャツ、リカーショップ全盛期のJ.CREWのシャツ、マイケル・バスティアンがデザインしたブルックス ブラザーズの最新チノ、ニューバランスの『990』・・・と、もう蘊蓄だらけで書ききれないな!

愛用のニューバランス『990』は、同ブランド渾身の一足で、もちろんmade in U.S.A。ソックスはグレンクライドという日本ブランドのシーアイランドコットン製と、ここにも蘊蓄が!

 タイトルで〝勝負〟なんて煽っておいてこんなことを言うのも申し訳ないが、自分らしく楽しんでいるファッションに勝敗をつけるなんて無意味。しかしアメトラという同じルーツをもつふたりの共通点と違いは、非常に気になってしまう。というわけで『ぼくのおじさんインタビュー』では、光石さんと新谷さんの〝細かすぎる〟アメトラ対談を敢行。ついていけなかったらごめんなさい!


光石研

1961年生まれ。福岡県北九州市出身。高校在学中の1978年に『博多っ子純情』で映画主演デビュー。1980年の上京後に本格的な俳優活動を始め、1990年代後半には日本映画界に欠かせない俳優として、その地位を確立する。なんと今までに出演した映像作品は 400本超! 近年ではYouTube『光石研の東京古着日和』などを通して、ファッションやライフスタイルのセンスにも注目が寄せられている。2022年2月には、初のエッセイ集『SOUND TRUCK』が発売! 気になるファッションの話もたくさん載っているからぜひチェックしてみよう。

新谷学

1964年生まれ。東京都八王子市出身。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、株式会社文藝春秋に入社。『Sports Graphic Number』や『文藝春秋』などの編集部員を経て、2012年に『週刊文春』の編集長に就任。忖度なしの編集方針で同誌と『文春オンライン』をひとつのカルチャーへと導き、現在は創刊100年周年を迎えた『文藝春秋』で編集長を務める。雑誌界におけるクラシックの頂点ともいえる同誌は、ぼくたちが読んでも面白い!

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