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パパスの特集④
パパスの丸の内店は
なくしちゃいけない
ファッションの
重要文化財だ!
出演/土屋大樹
撮影/山下英介
巨匠・立木義浩さんのファッションシューティングや、塚野さんのインタビューによって、ようやくぼくたちの前で、そのベールを脱いだパパスの世界。でもオンラインショップでポチッとやるのはまだ早い。もちろんネットでも買えるけど、まずはパパスの洋服を見に、ぜひともお店に行ってほしいんだ。なぜならそのお店・・・なかでも総本山である丸の内店は、デザイナーの荒牧太郎さんが心血を注いでつくりあげた、こだわりの結晶だから。どうしてここまでやれるんだろう?と不思議になってしまうほど贅を尽くした内外装と、定番ワードローブの見事な品揃えは、今やヨーロッパでも姿を消しつつある、本来の洋服屋さんの姿を彷彿させる。要するに、ひとつの文化だ! 今日はそんなパパス空間を、若手スタイリストの土屋大樹くんといっしょに訪れてみた。
丸の内の風景になじんだ
パパスのお店
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パパスの旗艦店があるのは、エリートビジネスマンたちが闊歩する丸の内の3丁目。実はこの街には数多の名店が潜んでいるのだが、中でもパパスがお店を構えている新東京ビルヂングは、1963年に竣工した歴史ある建築物。奇を衒わない本格志向のパパスには、ぴったりの場所である。
そのファサードは、ヨーロッパの歴史あるカフェやホテルを彷彿させる風格あるもの。この円柱は、もともとあったコンクリートの柱に、パパスがカスタムを施している。イタリアの職人が絵を描いた木材や金具を輸入し、元の柱をすっぽりと覆っているらしい。しかも本来できあがった絵の表面にやすりがけをして、味わい深く温もりのある表情を演出しているのだとか。のっけからパパス、おそるべし。
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贅沢だけど気取ってない
ヨーロッパの
洋品店みたいな空間
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お店の中はさらに非日常。その空間は、昔のヨーロッパでよく見かけた老舗洋品店そのものだ。N.Y.でいえばポール・スチュアート、パリでいえばシャルべ、ロンドンでいえばアンダーソン&シェパードハバダッシャリー、ミラノだと・・・どこかあったかなあ。とにかくこれほどの規模と品揃え、そして贅沢な内装の洋服屋さんは世界的に見ても本当に少なくなってしまった。個人的にはヘミングウェイがキューバで定宿にしていたホテルのロビーを彷彿させたが、デザイナーの荒牧太郎さんはキューバには行ったことはないとのこと。やはりパリやイタリアからのインスパイアによるものと考えられる。漆喰の壁や大理石の粉を練ってつくったピンク色の天井、見事にしつらえられた木製の棚、シーリングファン、ヘリンボーンの床・・・。どれをとっても一級品なのに、角が取れていて気取った感じがまるでないのは、パパスの洋服と全く同じ。実際にドアなどの木材にはやすりをかけているらしい。ちなみに2階にある棚は単なる飾りかな?と思ったら、なんと可動式の階段を左右に動かすことで、アクセスが可能なのだという。これはとんでもないな!
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スタイリスト土屋大樹さんの
パパスひとり試着大会!
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ぼくは今年で28歳になりましたが、正直いってパパスは名前を知っている程度でした。スタイリストとしても、一度もリースに行ったことはありません。でも今年に入って「週刊文春」の仕事で初めてプレスルームに行ったら、これがなかなかいいんです。一発で意識するブランドのひとつになりました。それにしてもこのお店もすごいですよね。こういった服をこれほどのスケール感と内容でやれるお店なんて、世界的に見ても珍しいんじゃないですか?
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ほーう、なんかいいじゃない、そのスタンドカラージャケット。というわけで土屋くんが、スタイリスト目線でパパスのワードローブをチェックしてくれた。
パキッとしすぎない、ちょっとくすんだ赤の質感が着こなしやすい、ドリズラージャケット。
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洗いをかけたようなシワッとした生地の質感が素敵な、ステンカラーのコート。背景にあるツナギもちょっと気になる!
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最高級のムートンとラフなジージャンを組み合わせてしまった、3ウェイ仕様のブルゾン! これは土屋くんが最も気に入った一着だ。「値段がもうちょっと安かったら間違いなく買うんですけど(笑)」
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ブーツカットのパンツと合わせたくなる、パッチワークのスエードシャツ。
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そして意外だったのが、英国はFOX BROTHERSの生地を使った、テーラードジャケット! パパスにはこんな、クラシックな洋服もラインナップされているのだ。「とはいえほかのクラシック系の洋服と違って、着心地も見え方もカチッとはしてないですね」
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「洋品店」としてのパパスの実力
最近は、アイテム数や色数を極力絞って、売れるものに一極集中するような、無駄のないビジネススタイルが主流だけれど、パパスのやり方はまるっきり逆。お客さんのワードローブやライフスタイルを丸ごとカバーするような、昔ながらの洋品店を彷彿させる品揃えでぼくたちを迎えてくれるのだ。
それがどういうことかというと、とにかく定番品のバリエーションが豊富。セーターやポロシャツ、シャツといったハバダッシャリー・・・すなわち〝紳士用品〟がいつ行っても買えて、しかも多くの色の中から選べる。これは名店の条件だね。特に最近は上質な靴下をバリエーション豊富に揃えたお店が減ってきているから、ここのラインナップはとても助かるし、楽しめる!
そういえば以前この連載で、クラシコイタリアの巨匠といわれた故フランコ・ミヌッチさんが、今はなき青山の骨董通りにあったパパスによく訪れていたという逸話を紹介した。話を伺ったときは不思議だったけれど、このお店を見たら納得。こちらのほうが規模はぜんぜん大きいけれど、フィレンツェにあったタイ・ユア・タイのお店と共通するところあるもん!
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日本製にこだわったオリジナル商品を主軸に据えているパパスだけれど、決してそれだけに固執しているわけじゃない。ツイード、レザー製品、雑貨など、ヨーロッパの専業メーカーに一日の長があるものに関しては、それらを選ぶことも多いようだ。
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中には、こんな珍品、名品も。
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イタリアのデュカル社につくらせたアリゲーター製のUチップ(これはなんと石川次郎さんも愛用している!)や、本べっこう製のメガネ、ヘミングウェイも愛用したモンテグラッパの万年筆・・・。どれも高価だけれど、ぼくたちを素敵な大人にしてくれる名品ばかり。今はまだ買えないかもしれないけれど、上質なものを見て、目を肥やしておくのはいいことだ。親切なスタッフさんも、きっと優しく対応してくれるだろう。
丸の内のヨーロッパ空間
パパスカフェでひとやすみ
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買い物を済ませたら、店内に併設しているパパスカフェで、ひとやすみ。パリの街角にありそうな内装のこのカフェには、ピザ窯が設置されており、かなり本格的なパスタやピッツァも楽しめる。さて土屋くん、初めて訪れたパパスのお店はいかがだったかな?
初めてパパスのお店に行って、色々と試着してみて感じたのは、意外やシンプルなものだけではなく、ヒネリの効いた服が多かったこと。そして着心地のよさは格別です。なんというか、ただ着るだけじゃなくて、あれ着てどこに行こうかな?と思える服が多いんですよね。
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「どこに行こうかな?と思える服」。
なるほど、確かにこれはパパスの服を表現するうえでは、かなり芯を食った言葉なのでは?
そう簡単に海外旅行に行けない今は、パパスカフェでヨーロッパ気分に浸ってもいいかもね。これほど天井が高くてヨーロッパ的な空間のカフェは、今の東京に存在しないもの。個人的には漆喰が塗られた壁のアールの、角を落とした感じがたまらないんだよな〜。
なんでもネットで買える世の中だけれど、やっぱりお店に行って、いいものをたくさん見て、迷って、疲れて、お茶して・・・という昔ながらのショッピングのほうが、携帯の画面と睨めっこしているよりもずっといい。と、いいつつ「ぼくのおじさん」もWEBメディアなんだけどね(笑)。
パパスの肩ばかり持つわけじゃないが、このお店はぼくたちにとっても、そんな豊かな時間を過ごせる場所だと思う。この一連の記事を読んで、「パパスってなんだろう?」と思ったら、ぜひ足を運んでみてほしい。そして試しに袖を通してみてほしい。
パパスとは単なる服じゃない。ぼくたちの生活に温もりを与えてくれる、ひとつの文化なのだから。
- パパス丸の内本店
パパスと、パパスのルーツとなったウィメンズブランド、マドモアゼルノンノンのフルラインナップが揃う旗艦店。カフェも併設しているから、もしかしたら家族でランチがてら行ってみてもいいかもしれない!
住所/東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル
TEL03-3284-8847