2022.10.4.Tue
今日のおじさん語録
「役者というのは、行をする者、自分というものをよく考え、見極める者のことやと思う。(藤山寛美)」

『ぼくのおじさん』
創刊にあたって

文・写真/山下英介

はじめまして。『ぼくのおじさん』編集人の、山下英介と申します。

かれこれ20年ほどメンズファッション、とりわけラグジュアリーと呼ばれる分野の雑誌編集を手がけてきました。洋服が本当に大好きで、思いっきり背伸びをしながら、いろんな国を旅して、世の中でいちばん格好いいものや、スタイルを追いかけ続けた、20代から30代。その刺激的な日々の中で得たモノや情報は、きっと自分という個性を形づくるうえでは欠かせない、血肉になってくれたでしょう。

でも、それよりずっと自分の心を養ってくれたのが、〝ぼくのおじさん〟たちとの出会いです。

ファッション雑誌を製作する過程で会ったいわゆる業界人のおじさんや、彼らの証言を通してその存在を知った、今はなき伝説のおじさん。お洒落で、物知りで、決して単純な善人とはいえないけれど、社会で生き抜くために必要な〝知恵〟や、新しい価値観を授けてくれる彼らの存在は、郊外都市の核家族で育った僕にとって、ようやく出会えた〝ぼくのおじさん〟だったのです。

つまり満男にとっての寅さん。
少年ジェラールにとってのユロおじさん。
1960年代の若者たちにとっての伊丹十三さん。

そして45歳になった今、心から思うわけです。異なる価値観を持った人間同士が断絶しつつあるこの社会において、〝ぼくのおじさん〟と出会えた自分は幸運だった、と……。

そんなわけで、Webマガジン『ぼくのおじさん』を創刊します。

お洒落なおじさん。
物知りなおじさん。
食いしん坊なおじさん。
ときには、ちょっといかがわしいおじさん……。

ここでは、ぼくが今まで出会ってきた魅力的な〝ぼくのおじさん〟たちの存在を、皆さんにどんどんご紹介したいと思います。そしてぼく自身もまだ知らない〝ぼくのおじさん〟たちと、これからも出会い、皆さんといっしょに学んでいきたいと思います。

ちなみに、ここでいう〝ぼくのおじさん〟とは、決して年齢や性別で定義するものではありません。両親や先生からは得られない、大切な〝気づき〟を与えてくれる人。ネットで検索しても出てこない〝知恵〟や〝文化〟をもっている人。新しい世界の扉を開いて、ぼくたちの背中を押してくれる人。そんな存在は、若者だっておじいさんだって女性だって、みんな〝ぼくのおじさん〟!

1960年代のレストラン「キャンティ」しかり、1970年代の喫茶店「レオン」しかり、かつて社会には、素敵な〝ぼくのおじさん〟と出会える場所がありました。メディアとしての『ぼくのおじさん』を、そんなサロンのような空間に育てていきたいと思います。

山下英介

1976年生まれ。LEON(主婦と生活社)、MEN’S EX(世界文化社)などの編集部員を経て、2009年から2020年までMEN’S Precious(小学館)のファッションディレクター、クリエイティブディレクターを務めた、メンズラグジュアリー&ファッションメディアのスペシャリスト。現在は「週刊文春」「文藝春秋」(文藝春秋社)のファッションページのディレクションなどを手がけつつ、「ぼくのおじさん」を運営。

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