2024.10.4.Fri
今日のおじさん語録
「雑草という植物はない。/昭和天皇」

若きジェントルマン、
阿由葉銀河くんが学ぶ! 
〝ナポリ仕立て〟の
入門編にして決定版、
デ・ペトリロの真髄

撮影(写真・動画)/高原健太郎

今回はおじさんたちだけに独占させておくにはもったいない〝ぼくたちの名品〟を紹介。「デ・ペトリロ」という、イタリア・ナポリの新興テーラリングファクトリーが仕立てたジャケットだ。単なる優れた良品ってわけじゃなくて、ナポリという地域の文化が凝縮されたようなその服は、今は知る人ぞ知る存在だけれど、これからきっと誰もが知る名品になるはず。そこで、今このブランドに一目置いている若きウェルドレッサーに、デ・ペトリロの魅力を探ってきてもらった。

洒落者ぞろいで知られるビームスFの若手スタッフで、「ぼくのおじさん」が今もっとも注目しているのが阿由葉銀河(あゆはぎんが)くん25歳。一度目にしたら忘れられない名前もさることながら、とにかくセンスが素晴らしい。毎日きれいなジャケットやスーツを着ているのに、着られている感じや、頑張っている感じはゼロで、なぜだかいつでもリラックスして見える。ぼくたちがジーンズや軍パンにスニーカーを合わせるがごとく、スーツを着られる男なのだ。ちょっと褒めすぎかもしれないけど、これってフレッド・アステアに通じるセンスなんだよな。

今回はそんな阿由葉くんが、今とても気になっているというイタリア・ナポリのブランド「デ・ペトリロ」のジャケットを学びに行く様子を、密着させてもらった。

この日はもちろん、デ・ペトリロのジャケットを着用していた阿由葉くん。ブラウン系のジャケットなのに、ニットタイやローファーにはブラックをチョイスしている。このあたりのセンスも、実に粋なんだよな。
阿由葉くんが着用しているジャケットは16万6,100円(アイネックス/tel03-5728-1190)

ナポリのジャケットってなんでこんなに軽くて柔らかいんだろう?

古着にも合うのかな?

どうして格好よく見えるんだろう?

阿由葉くんが気に入ったのが、ブラウンを基調に、さりげなくグリーンを効かせ紡毛生地。カジュアル使いしやすい生地を幅広く展開していることも、このブランドの魅力だ。

そんな疑問をこれから解き明かしていくので、この動画とともにぜひご覧あれ。

阿由葉くんの取材メモ①
デ・ペトリロの仕掛け人に聞いてみた!

肩から首にかけて吸い付くようなフィット感が、ナポリ仕立ての真骨頂。デ・ペトリロのジャケットは、既製品なのにその辺がすごくよくできているのだ。

デ・ペトリロのことを知るなら、まず向かうべきはこちら。このブランドのインポーターを手掛ける、アイネックスの遠藤将慶さんである。

「デ・ペトリロは2009年にスタートした新興ブランドなのですが、ナポリ伝統の仕立て技術がふんだんに盛り込まれています。その真骨頂はやはり肩まわり。肩パッドなどはなるべく使わず、なるべく軽い仕立てで身体にフィットさせ、軽い着心地を実現しています」という遠藤さん。

小さめで脇にフィットするアームホールは、たんなる円形ではなくて、空豆のような形状になっている。アームホールが小さい=動きにくいと錯覚しがちだけれど、これは大きな間違いで、生地が身体と一体化したかのような、動きやすさを感じるはずだ。既製品で表現するのは難しいのだが、これがデ・ペトリロのこだわりどころだ。

なるほど、ぼくはまだナポリに行ったことがないけれど、この極上の着心地には、ナポリの風土がおおいに影響しているみたいだ。

こちらがナポリ郊外にあるデ・ペトリロのファクトリー。家族経営の小さな工房では、30人程度の職人が腕を振るっている。

阿由葉くんの取材メモ②
古着との相性はいかに?

下北沢のものすごくお洒落な古着店「フォレスティエール」にて、イタリアのミリタリー系スラックスを試着する阿由葉くん。左は若手スタッフの金築晴里(かねつぎはると)さんだ。

この〝軽さ〟がポイントなのか、デ・ペトリロのジャケットはクラシックなドレスパンツ以外にも合わせられそうな気がする。そこで向かったのは古着の新しい聖地として知られる下北沢。なかでもぼくが注目しているのは、ヨーロッパ系の上質な品揃えで注目されている、「フォレスティエール」というお店だ。今日はイタリア軍のミリタリーパンツを買ってみたけれど、ウールとはいえカジュアルなパンツに合わせられる点は、さすがナポリ仕立てのデ・ペトリロ。堅苦しいほかのジャケットでは、そうはいかない。

渋谷にある古着店クローチアの姉妹店、フォレスティエール。メゾンブランドからサルトリア系、ミリタリーに至るまで、素敵なおじさんが着ていたような、上質なワードローブを取り揃えている。ウィメンズの品揃えも見事だから、デートにもぜひ。

FORESTIE`RE(フォレスティエール)
住所/東京都世田谷区北沢3-19-20 reload2-4
TEL/03-5738-7998
定休日/不定休
営業時間/12:00〜20:00
https://www.instagram.com/forestiere.tokyo/

阿由葉さんの取材メモ③
ナポリピッツァの名店で、
憧れの鴨志田さんに会ってみた!

ご存じメンズファッション業界のカリスマ、鴨志田康人さんと。カメラには映っていないが、奥のほうでは店主の池田哲也さんが聞き耳を立てている(笑)。「ぼくのおじさん」に登場するふたりのファッション知識とセンスは、超弩級だ。

さて、今日ぼくがお気に入りのデ・ペトリロのジャケットを着てきたのには大きな理由がある。それはぼくが大尊敬するメンズファッション業界の重鎮、鴨志田康人さんにお会いできる日だから! 待ち合わせたのは、東京屈指のナポリピッツァの名店である、「ベッラナポリ」。ちなみにこちらの店主の池田哲也さんは、ナポリ仕立てに詳しい服飾評論家でもある。緊張するぼくに、鴨志田さんはいろんなことを教えてくれた。

洋服は、その国の気候や風土から生まれてくること。

そしてナポリは〝ナポリ国〟と呼ばれるほどに、イタリアにおいても独自の文化を持った土地であること・・・。

イタリアの服は今までたくさん着てきたけれど、やっぱりデ・ペトリロのジャケットが特別に思えるのは、こうしたナポリ文化から生まれてきたからなのだろう。いつかは行かなくてはいけないな。

「手縫いならではの味わいと、マシンの端正さをミックスした、すっきりとした仕立て」がデ・ペトリロの魅力だと語る鴨志田さん。鴨志田さんが袖を通すと、まるでビスポークしたかのようにフィットして、憧れの鴨志田スタイルが完成した。これは人体の曲線になじむ〝丸い仕立て〟の賜物だろう。

しかも普通のダブルブレストって、フロントボタンを外すと途端にだらしなく見えるのだけれど、これは決してそう見えない。むしろカーディガンを羽織っているかのような、洒落たムードが漂うのだ。

「ラペルがどの辺で返るのかあやふやなところがいい」とは、けだし名言。なるほど、その塩梅が鴨志田スタイルの極意なのかも・・・。ぼくも真似させていただきます!

手縫いの味わいと、マシンメイドの美しさ、モダンさが共存するデ・ペトリロのジャケット。ちなみに湾曲した胸ポケットはバルカ(船底)型と言って、これもナポリ仕立て特有のものだ。
池田さんと鴨志田さんが感心していたポイントがこちら。ここまで縁のギリギリまで縫えるファクトリーは、なかなか存在しないという。

立体的な仕立てに加え、コバのギリギリまで攻めたステッチに、思わず「この価格帯でこれをつくれるのは、ペトリロだけじゃないですか」と口が出てしまう池田哲也さん。あまり洋服のオタクっぽい話は好まない鴨志田さんも、デ・ペトリロの縫製技術に舌を巻くとともに、そのコスパに太鼓判を押していた。確かに決して安い服ではないけれど、リアリティある価格のデ・ペトリロは、これからのぼくが暮らし、装う上で強い味方になってくれそうだ。

「長々洋服の話をしているのもつまんないから、ピッツァでも食べていきましょう」

 
「ぼくのおじさん」にも登場した池田哲也さんが開いた、日本トップクラスのピッツェリア。何度でも言うが、ここのマルゲリータは絶品だ。

BELLA NAPOLI(ベッラナポリ)
住所/東京都江東区高橋9-3
TEL/03-5600-8986
定休日/日曜、月曜
営業時間/18:00〜22:00

ぼくのような若輩者にも暖かく、そしてフランクに接してくれる鴨志田さんの人柄に、今日はすっかり魅せられてしまった。決して偉ぶらない、軽やかな紳士のためにある服、それがデ・ペトリロなのかもしれない。ぼくもここの服を着ていたら、そんなおじさんになれるかな?

DE PETRILLO(デ・ペトリロ)

2009年にナポリ郊外で設立された、家族経営のファクトリーブランド。〝サルトの精神で、大量生産ではなく、一枚ずつ丁寧に仕上げること〟をモットーに、クラシックとモダンさを兼ね備えたジャケットを仕立てている。問い合わせ先:アイネックス/tel03-5728-1190

阿由葉銀河(あゆはぎんが)

BEAMS F スタッフ。クラシッククロージングをこよなく愛する25歳。日々の装いを記録したInstagram(https://www.instagram.com/ginga_ayuha/)を通じて、若い世代に絶大な人気を誇る。ビームスハウス丸の内を経て、現在は原宿のビームスFに勤務。身長175㎝。

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