これが最後のチャンス!?
〝別格のテーラー〟
ティンダロ・デ・ルカの
テーラリング文化遺産が
まさかの再発掘!
撮影・文/山下英介
2024年末に開催して驚くほどの反響をいただいた、ミラノの仕立て屋ティンダロ・デ・ルカさんのアーカイブセール。この夏、彼のアーカイブを引き継いだ神藤光太郎さんから「ぼくのおじさん」の編集人のもとに、そのスーツやパンツが再発掘されたという報せが届きました。その全貌やいかに・・・!?
スーツから
ビスポークシューズまで
奇跡の大発掘!
前回の記事はこちらをご覧ください!
神藤さん! 前回はスーツやジャケットで約50着、パンツで約30本もの洋服が旅立っていったから、まさか残りがあるなんて思わなかったですよ。いったいどのくらい見つかったんですか?
神藤 ご覧ください。

ちょっとちょっと(笑)。前回よりも多いじゃないですか!
神藤 実はティンダロが持っていたシチリアの別荘から見つかったんですよ。たぶんスーツが50着以上、パンツも30本以上。あと今回は少量ですがコートと、本人が履いていた靴も30足ほど送ってもらいました。靴もベンティベーニャ製法のビスポークを中心に、かなり面白いものばかりですよ。


これはとてつもないなあ・・・。
神藤 前回、とてつもない反響をいただいたこともあって、ご遺族も喜んでいるんだと思いますよ。
ティンダロさんは小柄な方だったので、正直いって前回のアーカイブセールでは、そこまで売れるとは思っていなかったんです。でも蓋を開けてみたら大行列で、小柄な方だけじゃなくて、おそらく身長175㎝くらいの方まで試着して、買ってくれた。驚いたことにそういった体格の人でも、肩さえハマれば動きやすいし、不思議とサマになっちゃうんですよね。
神藤 もちろんお直しは必要だし、袖だけはちょっとしか出せませんけど、それでも試着した方はみんな喜んで買ってくださいましたよね。
ティンダロさんのことを知らない若者もたくさん来てくれたんですが、スーツへの向き合い方が自由なんですよね。合わせる靴もニューバランスだったり、ツンツルテンの袖はグッチみたいで逆にかっこいい、みたいな(笑)。でも、これほどサイズが違っても買ってみたいと思わせるティンダロさんのテーラーとしての魅力を、改めて知りたくなりました!
テーラー大島崇照が語る
ティンダロ・デ・ルカの
凄腕伝説


神藤 そう思って、今日はテーラーの大島崇照(たかあき)くんに来てもらいました。彼は「ストラスブルゴ」在籍時にティンダロの薫陶を受けた、数少ない日本人テーラーですよ。
大島 神藤さん、ぼくもこのラインナップに驚きました。これ、ボタンだけ外して全部もらえませんか(笑)?
神藤 帰れ(笑)! でもその気持ちはわかるわ〜。

テーラーから見ても、それほどいいものなんですね!
神藤 彼が使っていたボタンは今ではもう買えないし、つくれませんからね。ここまで深く彫ることもできないし、色自体も昔の染料で染めていたらしく、さらに日光に灼けていい雰囲気になっていますし。ぼくも再現にチャレンジしたんですが、諦めました。
大島 穴の部分の角が全部取れていて、日本でいう「狸穴」、いわゆる面取りがしてあるんです。
大島さんは、晩年のティンダロ・デ・ルカさんにずいぶん可愛がられたと聞きますが、初めてお会いになったのは、「ストラスブルゴ」の専属テーラーだった2010年くらいのことですよね?

大島 ぼくはもともとロンドンの「CONNOCK&LOCKIE」というテーラーで修行していたのですが、「ストラスブルゴ」はイタリア好きなお客様も多かったし、やっぱり着心地のいいスーツが求められていることがわかったので、必死でイタリアに寄せていった頃だったんですよね。
そこらへんは柔軟なタイプだったんですね。
大島 ぜんぜんこだわりがないというか(笑)、お客様に喜んでもらえればなんでもつくるタイプなので。そんなときに「ストラスブルゴ」が日本に招聘したテーラーがティンダロ・デ・ルカさんだったんですよ。
初めてそのスーツを見たときの印象はどうでしたか?
大島 「カラチェニ」っぽいな、と思いました。実はミラノで「A.カラチェニ」のスーツを見たことがあったんですが、手仕事が圧倒的に多くて、ロンドンで4年間修行したというのに「全然こっちのほうがかっこええな」と(笑)。ティンダロのスーツはそれと似ていましたね。


ティンダロさんも大島さんがつくったスーツをご覧になったんですよね?
大島 ボロクソでしたね(笑)。
神藤 こっちが通訳するのもイヤになるくらい酷評だったよな。ただ、彼は何を見せても辛辣なんですよ。ほかのビスポークスーツに対しても「あれ着たらクルマ掃除するのにちょうどええで」みたいな調子で(笑)。
大島 ぼくも気持ちいいくらいに否定されたので、せっかくだから色々教えてもらおうということで、なんでも聞くことにしました。ティンダロさんご自身も、包み隠さずなんでも教えてくれましたからね。なので会社に求められたわけでもなく、自分から彼の作風に寄せていったんです。
神藤 最後はほめてくれてたよね。
でも、テーラーとしては作風をガラリと変えるのは大変じゃなかったですか?
大島 いや、ぼくはコロコロ変えるタイプなので。ただ、ティンダロさんがつくるスーツも、ひとつひとつやり方が違うんですよ。デザインはもちろん、構成の仕方、ダーツの入れ方まで、全く違う。同じ作風に見えても、色々試しているんですよ。
神藤 時代によっても全然違うしね。
いわゆる上質な仕立て服の典型的な特徴ともいえる「一枚襟」にもこだわっていなかったと聞きますが。
神藤 彼が優先するのは、仕立て映えやきっちり着られるかどうかで、よいものがつくれるとなれば、慣習には全くこだわりませんでした。
大島 「このやり方じゃないと」というこだわりはなかったですね。
大島さんが一番「すごいな」と思った点はどこでしょうか?
大島 やっぱりお客さんに合わせる力でしょうか。フィッティングも生地選びも完璧で、その仕立て上がりは、同じテーラーとしても「ヤバいな」と思わされていました。でも仮縫いの前に体型が変わった人にはよく怒っていましたね(笑)。

神藤 半年経つと劇的に体型が変わる人多かったからね(笑)。日本のお客さまって他の国よりマニアックな方が多いんですが、それを黙らせるくらいの完成度だったから、誰も何も言わなかったですよ。当然パンツの縫製などは外注もするんですが、下請けの職人さんのレベルも異常に高かったです。
大島 ぼくの今のパターンは完全にティンダロさんの教えをもとにしたものなのですが、教わるたびにやり方が違うんですよ(笑)。「こういうやり方もあるんだ」って。
神藤 自分の洋服は実験でつくってるとのことでした。だからこれだけ着数があるんでしょうね。
大島 ここなんて、3回手で縫ってますよ。テープがついてるんですけど、それを本体に留めて、端っこを見返しと一緒に手で留めて、最後にステッチ。たぶんカラチェニ系に共通する縫い方だと思いますが。


当たり前ですが、普通の既製品のスーツとは違うわけですね。
大島 普通の既製品のスーツはミシンで縫って、AMFステッチで抑える。だから機械で2回ですね。
神藤さんは以前、ティンダロさんのスーツは〝すべての角を落としている〟と表現されていましたが、これもやっぱり難しいことなんですか?
大島 技術的に難しいというより、シンプルに手間なんですよ。
神藤 かけられるところには、すべて手間をかけているという。

カラチェニもそうですが、ティンダロさんのスーツを見ていると、フレッド・アステアあたりが着ていたサヴィル・ロウ全盛期のスーツを彷彿させる部分もあるんですが。
大島 芯地の構成は少し英国寄りかもしれませんね。台芯というベースに、馬の尻尾の毛を使った増し芯やフェルトを組み合わせているんですが。
神藤 ただ、イギリスから影響を受けているってことはないと思いますよ。もともとドメニコ・カラチェニで勉強したスタイルのベースがそうだった、というだけで。彼はよく、スーツは胸から上がすべてで、あとはアホでもできると言ってました(笑)。ただ、それをやるためには裁断にせよ縫製にせよ、すべてをちゃんとやらないといけない、という前提なんですが。
大島 本当に真面目な方でしたね。お客さまがいいと言っても、自分がちょっとでも合わないと思ったら持って帰って直してましたし。
神藤 基本、イタリアのテーラーはその場でなんとかして納めようとするからな(笑)。
そんなすごいテーラーなのに後継者に恵まれなかったのが不思議ですね。
神藤 見てる感じでは、興味なかったと思いますよ。あの強烈なメンタルに付き合える人も、なかなかいなかったと思うし。
大島 ただ、ぼくは「日本で学校をやりたいからお前手伝え」って言われてました。
神藤 ただの思いつきやと思うで(笑)。
日本に来るのが楽しかったのかなあ。
神藤 それは間違いないですね。ミラノでいっぱい仕事があるから、ビジネス的には来る必要がないって言ってたし。

大島 服もいいけど、人間としてもかっこいい人でしたよね。
神藤 ぼくが心から尊敬する、数少ないイタリア人のなかのひとりです。とにかく筋を通すし、男前。ミラノでも人気者でした。毎日夕方になるとミラノの「コバ」から始まって、フォーシーズンズホテルのバーと、サンタンブローズというバーを仲間たちとハシゴして、シャンパン1本開けて帰るんですよ。しかも必ずスーツを着て行ってるしね。


大島 飲みに行く前に着替えるんですよ(笑)。シャツはシャツ工房にアイロンをかけさせて、ビシッと決めて。ミラノの工房には、ここに並んでいるくらい替えのスーツを置いてましたよ。
大島さんはティンダロさんに近づけたな、と思うことってありますか?
大島 全くないです(笑)。ティンダロさんのスーツはぼくも一着だけ持っていて、時折いろんなところを開けて、見直して学ぶことも多いんですが。たまに〝ティンダロっぽく〟というご注文をいただくこともあるのですが、そういうときは張り切りますよ!





ぼくも着られたら本当に買いたいんですけどね〜。さすがにサイズ50〜52のぼくだと、お直しは難しいかなあ。身長も5〜8㎝くらい違うし(編集人の身長は168㎝)、なにより袖も短いですし・・・。
大島 ぼくは何回かティンダロさんのスーツを直したことがあるんですが、山下さんならいけると思いますよ。モノにもよりますが、ウエストで13㎝くらい出せますから。
そんなにいけますか!?
神藤 袖は限界もありますが、ちょっとは伸ばせますよ。パンツはダブルを外して偽カブラみたいにすれば4㎝は出せると思う。
上着の着丈や袖の太さは?
大島 着丈は下と上からいけますし、袖の太さも3㎝くらいは出せると思います。襟外して、肩外して、袖外して、という大直しをすれば十分合わせられます。
神藤 あくまで私服だから個体によって縫い代の量は違うし、お直し代はとんでもないことになりますけどね(笑)。くれぐれも腕のいい修理屋さんかテーラーに直してもらってくださいね。安いお直し屋さんだと、全く別のものになってしまいますから。
だったらぼくも一着買いますよ! 皆さんに申し訳ないけど、それくらいの役得はお許しください(笑)。
これが最後!?
ティンダロ・デ・ルカ
第2回アーカイブセール

というわけで、奇跡的に2回目の開催ができることになった、ティンダロ・デ・ルカのアーカイブセール。「ぼくのおじさん」の小さなアトリエで開催した前回、皆さまを大変お待たせしてしまった反省を踏まえて、今回は西麻布にある神藤さんのショールームにておこなうこととなった!
また、それぞれの個体がもつ縫い代や、これくらいなら修理して自分の体に合わせられるか・・・? みたいな疑問に答えてくれるプロも必要だと思うので、今回は腕利きのリフォームサロン「心斎橋リフォーム」に出張してもらうことになりました。お望みの方は、その場で修理に預けられます。
これを逃したらさすがに次の機会はないと思うので(断言はできないけど)、前回ご満足された方も、買い逃してしまった方も、ぜひ奮ってご参加してください!
【場所】
MASTER PLAN ショールーム
東京都港区西麻布4-7-10 麻布笄町Aハウス2F
【開催日時】
2026年10月3日(土)12:00~19:00
2026年10月4日(日)12:00~18:00
【価格】
スーツ¥100,000+税〜
スリーピーススーツ¥120,000+税〜
※その他ジャケットやジレ、パンツ、コート、靴などもあります。
【ご注意】商品はすべてティンダロさん自身が仕立て、着用したユーズド品です。ご試着は可能ですが、商品の修理や寸法直しについてはご自身でお願いいたします。
【入場】
フリー(予約不要)
入場者様が多数いらした場合、付近でお待ちいただくこともありますので、ご了承ください。
【決済方法】
現金、クレジットカード
【ご予約・イベントのお問い合わせ】
もしくはInstagramのDMにてお願いいたします。
伝えたいこと
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